ONEハート通信2025年9月251号 

         【毎日新聞2025年7月6日掲載】 京都大学チーム調査
    高齢者楽器で認知力維持 練習継続で効果 
        
 
 
ワーキングメモリーに重要な脳の部位 「被殻」 =積山華京都大特任教授提供


高齢になってから始めた 趣味の楽器演奏を、その後も「続けた人」と「やめた 「人」とでは、
脳の老化現象 に差が出るとの研究結果 を、京都大のチームが米専門誌に発表した。

32人の被験者を4年間追跡した成果で、楽器の練習が高齢者 の認知機能にもたらす効果を
長期にわたって調べた研究は初めてという。

積山薫・京大特任教授 (脳科学)らは2018年、音楽初心者の61歳以上の男女(平均年齢75)
4カ月間、京都市内の老人福祉施設で週1回、鍵盤ハーモニカのグループレッスンを受けてもらった。


自宅でも 練習してもらった結果、お おむね認知機能が向上する ことを確かめた。 

そして4年後の22年、実験参加者を再び招集。
この間も練習を続けていたグループ13人(平均年齢7785)と、
途中でやめてしまったグループ19(76) との間で、認知機能や脳の構造の違いを比べた。
 

18年の時点で、二つのグループに違いはみられなかった。
ところが、22年の認知機能検査では、「やめた グループ」に加齢に伴う成績の低下がみられた一方、
「続けたグループ」は成績が維持されていた。
 

さらにMRI(磁気共鳴画像化装置)で脳の構造を調べたところ、
「やめたグループ」のみワーキングメモリー(作業記憶)に
重要な脳の部位「被殻」に萎縮がみられたという。
 

積山さんは22年、ピアノやバイオリンなどの演奏を幼少期から続けている高齢者の小脳は
神経細胞が並ぶ「灰白質」の体積が大きい という研究結果も発表して いる。
 

積山さんは「1曲通して弾けるように曲を覚え、他人と合わせて演奏すること認知機能に
良いのでは」と分析。

「『やめたグループ』 の中には趣味で運動をしていた人も多くいたが、 認知機能低下を防ぐには
楽器練習の方が有効。

年を取ってからでも遅くないので、ぜひ興味がある楽器をやってみて」と話している。
                          
                                【信田真由美さん】